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肺がん
【1】肺がんとは
肺がんは気管、気管支、肺胞の細胞が正常な機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら他の臓器に広がり、多くの場合、腫瘤(しゅりゅう)を形成します。 罹患率、死亡率は男性のほうが女性より高く、女性の3倍から4倍にのぼります。また、罹患数と死亡数に大きな差はなく、これは、肺がん罹患者の生存率が低いことと関連しています。
肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つの型に大きく分類されます。非小細胞肺がんは、さらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどの組織型に分類されます。 この内、小細胞がんは肺がんの15~20%を占め、腺がんは最も発生頻度が高く、男性の肺がんの40%、女性の肺がんの70%以上を占めています。
【2】症状
咳や胸痛、喘鳴(ぜんめい:呼吸時のゼーゼー音)、息切れ、血痰、嗄声(させい:声のかれ)、顔や首のむくみなどが一般的症状です。扁平上皮がんや小細胞がんに多い肺門型の肺がんは、早期から咳、痰、血痰などの症状が出現しやすく、腺がんに多い肺野型の肺がんは、がんが小さいうちは症状が出にくい傾向があります。
【3】肺がんの治療
肺がんの治療には、主なものとして外科療法・放射線療法・化学療法(抗がん剤)の3つがあります。 がんのある場所、組織型、病期、他の臓器の機能や健康状態によって、治療の方法を選択しますが、外科療法は、極めて早期の場合のみが手術の対象となり、術後には抗がん剤による化学療法が必要になります。
1.外科療法
肺がんが早期の場合に行われます。手術方法としては、肺の患部を部分切除する場合、肺葉切除する場合と片側の肺をすべて切除する場合があり、リンパ節にがんがあるかどうかを確認するためにリンパ節郭清(かくせい・リンパ節切除)も行います。非小細胞がんの場合、通常はI期からIIIA期の一部が手術の対象となります。小細胞がんの場合、I期などの極めて早期の場合のみが手術の対象となります。
2.放射線療法
非小細胞がんの場合は手術できないI期からIIIA期、胸水を認めないIIIB期、小細胞がんの場合は限局型が対象となります。肺がんの場合、通常は身体の外から患部である肺やリンパ節に放射線を照射します。小細胞がんは脳へ転移する場合が多く、脳へ転移するのを防ぐ目的で脳放射線治療が行われることもあります。
3.抗がん剤による化学療法
抗がん剤を静脈注射、点滴静脈注射、内服することにより行う治療法です。小細胞がんでは、化学療法がよく効く場合が多くみられますが、非小細胞がんは抗がん剤が効きにくく、現状では抗がん剤のみでがんを治すことは難しいです。
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(1)非小細胞がんに対して用いられる主な抗がん剤
シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、マイトマイシンC、ビノレルビン、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ティーエスワン、ゲフィチニブなど。
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(2)小細胞がんに対して用いられる主な抗がん剤
シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、イリノテカン、イフォマイド、アムルビシンなど。
これらの抗がん剤は、単剤療法(1種類のみ用いる)、もしくは併用療法(2種類以上の抗がん剤を組み合わせて用いる)で治療を行います。
4.内視鏡治療(レーザー治療)
気管支の内腔に発生した肺門型の肺がんに行われます。気管支鏡で見える範囲のがんにレーザー光線を照射して治療します。副作用、後遺症はまれですが、極めて限られた方が対象になります。
【4】肺がん治療の副作用
がん治療での副作用は避け難いのですが、小細胞がんは、特に急速に進行し致命的になりうるので、強力な治療を行う必要があり、そのため副作用も強く現れることがあります。
1.外科療法
肺を切除した結果、息切れや、術後半年~1年間の創部痛を伴うことがあります。
2.放射線療法
主な副作用は、肺臓炎、食道炎、皮膚炎です。 肺臓炎の初期症状は、咳・痰の増加、微熱、息切れです。症状が進行すると放射線肺線維症(はいせんいしょう)になる場合もあります。食道炎の症状は、特に固形物の通りが悪くなり、強い場合は痛みを伴います。皮膚炎は、かゆみや皮膚が赤くなったり皮がむけるなどの症状が現れます。
3.抗がん剤による化学療法
主な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。