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子宮体がん(子宮内膜がん)
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【1】子宮体がん(子宮内膜がん)とは
婦人科のがんで最も多いのは子宮がんです。子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんに分けられます。子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生する病気です。 一方、子宮腟部や頸管の上皮から発生したがんが子宮頸がんです。また、成人になると子宮は、くぼんだ西洋梨状になります。 年齢別にみた子宮体がんの罹患率は、40歳代後半から増加し、50歳代から60歳代にピークを迎え、その後減少します。
近年、子宮体がんは年齢に関係なく増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、子宮頸がんが途上国で高いのに対し、子宮体がんは欧米先進国で高い傾向があります。 子宮体がんは、エストロゲンによって増殖するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。確立したリスク要因としては、閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満、エストロゲン産生がん、がリスク要因とされています。薬剤では、乳がんのホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、更年期障害等に対するホルモン補充療法などで用いられる、エストロゲン製剤の単独使用などが挙げられます。その他のリスク要因として糖尿病、高血圧、乳がん・大腸がんの家族歴との関連が指摘されています。
【2】症状
他のがんと同様に、子宮体がんも初期のものほど治療成績がよいので、早期に発見(診断)することが大切です。もし、月経とは無関係の出血、おりもの、排尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状を認めたならば、婦人科医の診察を受けることが大切です。子宮体がんは、肥満、糖尿病、高血圧のある女性に多いとの報告があります。
最も普通に認められる症状は出血です。特に、閉経後に少量ずつ長く続く出血がある時は、早めに婦人科あるいは検診を受診し、子宮体がんの検査を受ける必要があります。検診などで、子宮がんの検査という場合、子宮頸がんのみの検査を指すこともあるので、注意が必要です。
子宮体がんは、タモキシフェンというホルモン剤の投与を受けている乳がんの方に見つかることが時々あります。もし、このホルモン剤を服用するのであれば、子宮体がんのチェックを定期的に受けることが大切です。ホルモン剤治療を受けていない場合でも、乳がんや大腸がんの方には、子宮体がんの発生する割合が少し高いことが知られていますので、乳がんや大腸がんを経験された方はチェックを受けたほうがよいと思われます。
【3】診断
子宮体がんは子宮の内側より発生するので、普通の子宮頸がんの細胞診テストではがんは見つけられません。子宮内膜の異常を検査するためには、頸管拡張と掻爬(そうは:子宮内膜を含め、子宮内腔内の異常組織をかき出す)やスプーン状に湾曲した器具で、子宮壁にできているものを除くために丁寧に削りとります。少し痛みがありますが、各個人によって痛みの強さは異なります。また検査後、数日少量出血することがあります。しかし、検査によるものですので心配はありません。採取された組織はがん細胞の有無などを調べるために組織診断に提出されます。
【4】予後と治療選択
子宮体がんと診断された後の予後(治癒の見込み)と治療の選択は、がんの病期(がんが子宮内膜に限局しているかどうか、または子宮の頸部や子宮の外に広がっているかどうか)と全身状態によります。さらに、予後は、がんの浸潤(しんじゅん:がんが子宮の壁に食い込んでいくこと)の深さ、リンパ節転移の有無、顕微鏡下のがん細胞の組織分化度(かたち)などの要素を加えて推測されます。早期のがんで子宮を残す治療を希望する時は、早期がんであることに加えて、がんの成長を女性ホルモン(プロゲステロン)が抑制する時に、はじめて検討されます。
治療を選択する基準は、病気の広がりを示す病期が最も大きな要素です。
【5】病期(ステージ)
子宮体がんと診断されると、がんが内膜から身体の他の部位へ広がっているかどうかを調べるために、さらに検査が行われます。治療を計画するため、超音波検査やCT、MRIによる画像検査によってがんの進行程度を診断します。子宮体がんの病期分類は子宮頸がんと異なり、手術治療後の病理検査結果に基づいて決められます。
0期
子宮内膜の異型増殖状態(正常の細胞とは顔つきが異なった異型細胞といわれる細胞が増えている状態)を認めるもの。
I期
がんが子宮体部にのみ認められるもの(子宮頸部、その他にがんは認められない)。
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Ia期
子宮内膜にのみ認められるもの
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Ib期
がんの子宮筋層への浸潤が筋層の1/2以内のもの
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Ic期
子宮筋層への浸潤が筋層の1/2を越えるもの
II期
がんが子宮体部を越えて子宮頸部に広がったもの(がんは子宮の外に出ていない)。
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IIa期
頸管内の浸潤が粘膜内にあるもの
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IIb期
頸管内の浸潤は粘膜を越えて深く浸潤しているもの
III期
がんが子宮外に広がっているが、骨盤を越えて外には広がっていないもの、または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの。
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IIIa期
がんが子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に転移しているもの、あるいは腹水の中にがん細胞の認められるもの
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IIIb期
腟壁に転移を認めるもの
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IIIc期
骨盤内、あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの、もしくは、基靭帯(きじんたい)に浸潤を認めるもの
IV期
がんが骨盤を越えて身体の他の部位へ広がるか、または膀胱、あるいは腸の内腔を侵すもの。
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IVa期
膀胱あるいは腸の粘膜までがんの浸潤を認めるもの
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IVb期
骨盤を越えた遠隔臓器転移を認めるもの、あるいは腹腔内や鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)のリンパ節に転移を認めるもの
【6】治療
子宮体がんには、外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つの治療方法があります。病気の広がりぐあいに応じて、これらを単独に、あるいは組み合わせて治療を行います。以下にそれぞれの治療方法について説明します。
1.外科療法
外科手術は子宮体がんの最も一般的な治療です。手術によりがんをとり除くと同時に、病気の広がりを正確に診断し、放射線治療や化学療法などの追加の必要性を判断します。病期によって下記のいずれかの術式を選択します。術式の違いは、切除する範囲の違いで、病期が進むと切除する範囲を広げなくてはなりません。しかし、切除範囲が広がると手術による障害があります。この2つの点を考えて適切な術式を選択します。
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(1)単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣・卵管)切除術
腹壁を切開し、子宮、卵巣、卵管を切除します。術前の診断で、0期の場合には標準的にはこの手術が行われます。手術前の診断でI期以上の場合には、これに加えて、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清(かくせい)を行う場合があります。
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(2)拡大子宮全摘出術
I期、II期の子宮体がんが適応になる手術で、子宮とともに周囲の組織や膣の一部などを切除します。骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。
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(3)広汎性子宮全摘出術
子宮、卵管、卵巣、腟及び子宮周囲の組織を含めて広汎に切除します。この術式は、手術前の診断で病気が子宮の頸部におよんでいる場合(II期/III期の一部)などに選択されることがあります。普通、広汎性子宮全摘出術の場合は、骨盤内リンパ節郭清を行います。同時に腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。
2.放射線療法
放射線治療は、高用量X線または高エネルギー線を用い、がん細胞を殺し腫瘍を縮小します。放射線治療は身体の外の機械から行う(外照射)方法と、ラジオアイソトープを充てんしたプラスチックを、がんの存在する部位の子宮腔内及び腟内に設置して行う(腔内照射)方法があります。この治療は単独または手術療法と組み合わせて、術後に行われます。放射線単独の治療は、放射線治療を希望される場合や、高年齢あるいは他の病気のために手術の行えない場合、病気の広がりのため手術を行うことが困難な場合(III期/IV期の一部)などに用いられます。手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の壁に深く浸潤していた場合、腟壁に浸潤していた場合などがあります。
3.化学療法
化学療法はがん細胞を殺す薬剤(抗がん剤)を使用します。経口的あるいは経静脈的に投与します。化学療法は全身的治療とも呼ばれます。それは薬剤が血流に入って全身をめぐり、子宮外のがん細胞を殺すことができるからです。化学療法を単独で行うのは、病気がすでに全身に広がっている場合(IV期の一部)などがあります。手術後に化学療法を行うのは、病気が子宮外に広がっている場合など(III期/IV期)です。
4.ホルモン療法
ホルモン療法は、がん細胞を殺すために女性ホルモン剤を使用します。黄体ホルモンの働きのある経口内服剤が普通用いられます。手術をしない段階の診断で、 0期もしくはI期で、子宮を摘出しないで残したいと希望する若年の女性の場合に選択されることがあります。その場合、がんの病巣を含む子宮内膜をすべて掻爬する治療と組み合わせて行います。また、再発の危険性の高い症例に対する補助的な治療として、あるいは化学療法の効果が不十分な場合や全身状態が不良で化学療法を行うことができない場合に、化学療法にかわる全身的治療として行われることもあります。
【7】再発
再発には、治療が行われた子宮、及びそれに続く腟や骨盤内の組織に発生する局所再発と、肺や肝臓に転移する遠隔転移再発があります。子宮体がんの局所再発と遠隔転移の発生する割合はほぼ同じです。局所再発には主として放射線療法が行われますが、孤立性の遠隔転移、特に肺転移には外科療法が行われることもあります。多臓器におよぶ再発や多くの転移のある場合には、ホルモン療法や化学療法が行われています。しかし、標準治療はなく、再発部位や再発様式に合わせて一人一人に適切な方法を検討して治療を行います。孤立性の肺転移あるいは腟壁再発を除けば、予後は極めて不良です。
また、治癒させる目的ではなく、腸閉塞を解除するための外科療法や、骨転移によっておこる痛みを軽くするために放射線療法などの治療(対症療法)を行う場合もあります。