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九州大学研究データ① 低分子化による効果等
フコイダンの分子の大きさでがん細胞の抑制に差が出るかどうかを検証する実験
大腸がんの細胞を接種したマウスに、高分子と低分子のフコイダンを混ぜた餌を与え、腫瘍移植後の日数を調べました。 高分子フコイダンは、初期の段階で腫瘍が大きくなるのを防ぐことがわかりましたが、全体的に強い腫瘍抑制効果は認められませんでした。 一方の低分子化フコイダンは、腫瘍の増殖抑制効果が継続的に見られました。生存日数においてもはっきりとした延命効果が認められます。
正常細胞にはダメージを与えないことの実験
正常細胞とがん細胞に対し、低分子化フコイダンを加えてアポトーシス誘導を観察しました。
細胞がアポトーシスを起こすとDNA量が減少します。そこでレーザー光線を細胞に当て、DNA量を測定するフローサイトメトリーという装置を使ってアポトーシスの有無を調べました。
結果、正常細胞に低分子化フコイダンを与えても、まったくアポトーシスを起こさないことがわかりました。このことから正常細胞へ若干の抑制効果が見られるものの、がん細胞と比較した場合には毒性は弱いものとなっています。また、細胞全般にダメージを与える抗がん剤のような副作用は起こりません。
がん細胞にはアポトーシスを起こすことの実験
がんの一種であるヒトの白血病細胞(HL60)に低分子化フコイダンを加えてみると、上記グラフのように、 低分子化フコイダンを加えたがん細胞は増殖せず、減少していくことが確認されました。このことからアポトーシスを誘導していることがわかりました。
低分子化フコイダンを加えたがん細胞は次第に丸くなって動きが止まり、内容物が風船のように漏れ出してきました。この事から、アポトーシスを起こしていることが確認できたわけです。
ヒト子宮がんHeLa 細胞(以下、子宮がん細胞)に低分子化フコイダンを作用させる実験
血管新生はがん細胞が血管の成長を促進するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)を分泌することによって起こります。しかし、低分子化フコイダンをがん細胞に作用させると、VEGFの発現を明らかに抑制している働きが確認できました。
図は子宮がん細胞に0.01mg/ml の濃度の低分子化フコイダンを加えて、VEGFの量を調べたものです。低分子化フコイダンを加えないものと比べ、有意にVEGFの発現を抑えていることがわかりました。
さらに、低分子化フコイダンはVEGFの抑制だけでなく、血管の形成を抑制することもわかっています。
これらは、「海藻モズクCladosiphonnovae-caledoniae kyline 由来の酵素消化フコイダン抽出物は、腫瘍細胞の浸潤及び血管新生を阻害する」と題した論文にまとめられ、国際学術雑誌『Cytotechnology』に発表されています。
「低分子化フコイダン」であきらめない治療を
九州大学大学院生命機能科学部門における基礎研究
九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門システム生物学講座細胞制御工学分野細胞制御工学教室では、がん治療における海藻由来酵素消化低分子化フコイダンの抗腫瘍効果の研究を続けております。フコイダン(低分子化フコイダン)の機能や、細胞メカニズム、三大作用について数多くの学会発表を行っております。