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笑ったり、泣いたり、喧嘩したり。家族の支えで起こした奇跡…。Sさん(77歳・男性・胃がん)2018年取材
俺は絶対に、生きて帰る!
そんなお父様の体調に異変が起こったのは、どういう経緯でしたか。
長男 2010年11月19日、ちょうど父の誕生日で家族みんなが集まっていた時、2日程前に血液検査を受けた病院から電話があり、すぐに大学病院で大腸と胃の検査を受けて、12月6日にステージ3bの胃がんだと告知されました。
長女 検査の結果は、父と弟と私の3人で聞きましたが、画像を見たら胃が真っ黒で、余命宣告はありませんでしたが、もうガーンとなって…。
長男 ところが、父は耳が遠くて十二指腸潰瘍だと勘違いして、今では笑い話ですが、外に出てから「お姉ちゃん言えや」「あんた言うてや」って。最後は「あんた長男やで」と言われてしかたなく僕が話しましたが、父は思ったより気落ちすることもなく、「そうか。それやったら、お前に仕事は任せる。俺は治療をするから」と言ってくれました。
Sさん その時はもう、手術して治さなければいけないと思いましたよ。息子のこともあるから、絶対に治すんだってね。
長男 「俺がおれへんようになったら、こいつ(長男)があかんようになるから、俺は絶対に生きて帰る」と会社のみんなにも言っていたみたいです。それで病院の先生から「すぐに手術をしましょう」と言われました。
長女 12月17日に入院して、21日に手術。父の兄・姉・妹、私・弟・妹みんなで手術が終わるのを病室で待っていましたが、不安でしたね。
長男 結局、がんは取れなかったけれど、バイパス手術をしたので、あとは経過をみていきたいということで、僕は「あとどれぐらいもちますか?」と先生に聞いたんです。でも、経過をみないとわからないと言われました。
長女 私はもう目の前がフーッとなって倒れてしまって。以前父から、いとこ5人とも胃がんでお腹を開けたけどダメで閉じたという話を聞いていたので、「もうダメなんや」とショックでした。
Sさん 私はとにかく抗がん剤治療を頑張ろうと思って、正月明けからTS-1を飲み始めたんですが、3日・4日目くらいから副作用が出始め、脱水症状になるくらいひどい下痢で、もう苦しくて。体重も5kg くらい減ったし、1週間後にはシスプラチンも併用する予定だったんですが…。
長女 母のこともあるから、私はとにかく不安で、しばらく病院に泊まって看病しました。1回だけシスプラチンを使いましたが、ひどい副作用で…結局、10日ぐらいでTS-1は止めました。
長男 それで、体力が落ちていましたし、気分転換に1回退院しようかということになったんです。
一時退院で少しお元気になられた?
長男 1月末に退院して2月22日まで自宅療養みたいな感じでした。そんな時、待ち望んでいた次女の最初の子が生まれたので、父も是非見に行きたいって…。
次女 真っ白い顔をして、寒い中をわざわざ病院まで会いに来てくれたんです。
長女 おかげで少し元気になりましたね。孫が生まれたことが気力につながったみたいで、本当に良い時に産まれてくれたと思いました(笑)。家族の絆が父を支えたんだと思います。